2010年 むろまちアートコート(京都)

1997年に始まった “菩薩シリーズ” の最後を飾る大作として制作された、高さ約4.9mのオブジェを中心とする彫刻と映像によるインスタレーション。個人もしくは人類の彼岸世界への想いをテーマに、会期を昼(生)と夜(死)の均衡する春の彼岸に設定。山水庭園、古代遺跡、SFなど、過去・現在・未来の重層的イメージが展開します。

本展は、個人や社会をとりまく閉塞的状況において、作家がとらわれた生と死をめぐる観念が元になっています。それは、生存不能な状況下に仮眠カプセルや棺に入るか蛹や繭のようなかたちをとって仮死状態となり、来るべき時と場所において再生しようというものでした。そこには、会場窓からの採光による昼間から照明と映像による夜間の展示へと徐々に変容する仕掛けが施され、再生への過程も暗示されます。





むろまちアートコート平面図









"cocoon"(仮眠カプセル、舟、もしくは亀石としての) 2010年  60 (H) × 210 (L) × 80 (W) cm

楮紙、銀箔、アクリル絵具、石膏、発泡ポリスチレン(心材)、パーライト
"cocoon"(仮眠カプセルもしくは鶴石としての) 2010年 左:45 (H) × 178 (L) × 58 (W) cm 右:69 (H) × 195 (L) × 80 (W) cm

楮紙、銀箔、アクリル絵具、石膏、発泡ポリスチレン(心材)、パーライト
"pupa"(宇宙船もしくは蓬莱山としての) 2010年  490 (H) cm

麻布、アクリル絵具によるスクリーンプリント、銅箔、鉄(構造材)、プロジェクター、DVDプレーヤー、パーライト

夕方は、窓からの採光と映像が同居する。作家のライフマスクを装着した “cocoon” は、古代遺跡の棺のような印象が強いが、その表面は、古代エジプト美術では “永遠” を象徴し、日本絵画においては “日” をあらわす金ではなく、満ち欠け(生と死の循環)する “月” をあらわす銀箔(硫化処理したもの)が施されている。

左画像右上は “羽化” (2007年)、“pupa” はこの小品の下半分の造形から発展させている。“pupa = 蛹” , “cocoon 繭” に対応させる意図で、会期途中から展示。

pupa” 内部に設置されたプロジェクターの映像は、白砂に散乱する鏡の破片に反射し、会場内の壁や天井に断片的に投影される。断片的に解体されることにより、風にゆれる樹の枝葉のシルエットと流れる川の水、テレビCMの映し出される広告塔モニターといった映像素材は、それぞれがゆらぎ(揺動)やパルス(脈動)として抽象化され、自然と人口のない交ぜとなった動的要素として “再生” する。
正面や側面から見れば、船体後部が地中に埋もれた宇宙船の廃墟、裏側からは、水中に頭から飛び込んだ巨大魚のようにも見える “pupa” は、半身が会場内に突入した異次元からの未確認物体的イメージ。現実空間と異空間をつなぐ役割を果たす。
pupa”中央部

宇宙船のコックピットと祠のイメージが同居する。





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